「森本尚樹の実践マーケティング戦略レポート」は森本尚樹のセミナーにご参加いただき名刺交換させていただいた方、著書「100人の村で84人に新商品を売る方法」(雷鳥社)に読者登録をしていただいた方、これまでにご縁をいただき名刺交換させていただいた方に非公開で配信しているオンラインレポートです。Googleなどの検索でも表示されないように処理しております。
こんにちはマーケティングインストラクター森本尚樹です。
本日の実践マーケティング戦略レポートのテーマは「集客の戦略」です。
書籍やホームページなどでは公開しにくい実事例をベースにノウハウを公開しますのでご興味のある方はどうぞ最後までお読みください。
セミナーや書籍でもお話をしているようにマーケティングには原理原則があります。
新たなマーケティング手法を謳っているものでも、実は原理原則に合致しているに過ぎないものがほとんどです。
さてさっそく集客にはどのような原理原則があるのかをお話しましょう。
数年前に私はあるバンドの集客のお手伝いをさせていただいたことがあります。
ただこの「集客」は仕事ではなく、プライベートで実施したものです。
当社は横浜市の中心地である、みなとみらい地区にあります。
私はある日、みなとみらい地区の入口であるJR桜木町の路上で演奏している4人組のバンドに出会いました。
いわゆるストリートミュージシャンです。
彼らは心に響く楽曲を演奏するバンドでした。
私は彼らのファンになり、路上ライブをよく見に行くようになりました。
出会ってから1年以上が経ち、路上ライブで立ちどまってくれる人は確実にふえました。
でもライブハウスでの集客数はほとんど伸びはなく、ほぼ20名~30名です。
私は集客について彼らに教えてあげるべきかどうか?ずっと考えていました。
「そんなことは彼らの事務所が考えることであり、また彼らもそんなことは望んでいないかもしれない」
私は彼らのファンとして彼らを応援してあげるだけで満足でした。
しかしある出来事をきっかけに私は彼らに集客を手伝ってあげることになったのです。
それは数か月ぶりに彼らのライブを見にライブハウスに行った日のことでした。
あいかわらず集客数は伸びていませんでした。
その日のライブが終了した後に、彼らは客がいるフロアに降りてきて、
3曲入りの「無料サンプルCD」の配布をはじめたのです。
「これはいつから配布しているの?」とメンバーに聞いたら、
「3か月前から配布してるんです」と元気に答えてくれました。
私は思わず大きな溜息をつきました。
無料サンプルCDの配布では人を集めることはできない
それが溜息の理由でした。
私はその日の夜に彼らのホームページを通して彼らにコンタクトをとりました。
「いつもすばらしい演奏をありがとう。ところで僕は集客などのコンサルティングを行う仕事をしています。もし興味があれば集客の方法に関してお話をさせていただきます。もちろん仕事ではありませんのでお金をいただくことはありません」
そんな感じの内容でした。
彼からは1週間、返信が来ませんでした。
8日後に「ぜひお願いします。僕たち集客ではすごく悩んでいます」という返信を受け取りました。
【質問】
皆さんは「無料サンプルCDの配布」にはどのような問題があると思いますか?
そのバンドの音楽を聞いてくれてファンになってくれるきっかけになるから良いのではと思いませんか?
確かにその考えに間違いはありません。
しかし、その考えはあまりにも不確実性が高く、またコストも見合いません。
この方法には最も重要なピースが足りないのです。
その「ピース」とは何か?少しだけ考えてみてください。
私はまず彼らに2つの質問をしました。
① 無料サンプルCDの配布後に集客数はふえたか?
② メルマガの読者は何人いるのか?
①は予想通り「ほとんど集客にはつながりませんでした」という答えでした。
②の答えは「約300名」でした。
私はいきなり彼らに答えを教えました。
「これから無料サンプルCDは必ずメールアドレスと交換にしてください」
これが集客を成功さるための重要なピースだったのです。
集客の原理原則は「リピーターを作ること」です。
お客さまを積み上げていかないかぎりはお客さまはふえませんし、
たとえ一過性に集められたとしてもビジネスとしては不確実性が高くリスクが大き過ぎます。
ではリピーターを作るための仕組みとは何かと言えば、
それは「お客さまへの継続的情報提供の手段を持つこと」に他なりません。
それがメールアドレス=メルマガでした。
(この事例は数年以上前のことですから、今ならLINE公式などのSNSを利用したかもしれません)
しかしただメールアドレスを収集して、メルマガを配信すればよいということではありません。
本当に重要なことはそのメルマガで何を伝えるかです。
ポイントは登録してくれた人がワクワクするような情報をメルマガを通して継続的に提供し続けることです。
メルマガによって顧客育成を行い認知客を信奉客(ファン)へと導きます。
メルマガで何を伝えたのかは後述します。
ここまでのおさらいです。
無料サンプルCDを配布してもファンになってくれることは少ない。
ファンになってもらうためには連絡先を獲得して情報を継続的に提供することが必要である。
リピーターになってくれるファンを積み上げることで集客は成功する。
ということになります。
これは何もミュージシャンにだけ通用する特別な事例をお話している訳ではありません。かなり広範囲な業態にこの原理原則は通用します。
さてもう少し具体的に実施したことをお話します。
集客のために制作した戦略ツールは以下の通りです。
① メールアドレスを記入できるチラシの制作
② 無料サンプルCD(すでに彼らが保有)
③ メルマガシステムの強化
④ メルマガと連動したホームページ
⑤ メールフォームの活用
ちなみにメルマガシステムはオートビズを利用しました。
オートビズはステップメールという機能を用いて登録から一定間隔でメルマガを自動配信することができます。
現在も私が利用しているのはオートビズです。
オートビズ
上記のうち①③⑤の初期バージョンの試作や初期設定を私がサポートしました。
さて戦略ツールがそろえば次に行うべきことは集客プロセスの構築です。
まずは「集客プロセス①メールアドレスの獲得」をご紹介します。
① 路上ライブで1回目のステージをはじめる(1ステージ3曲)
② 曲間でチラシを配布する
③ メンバーが2曲目演奏後のMCで以下の説明を行う
「今、演奏した曲を含む3曲入りのCDを無料でプレゼントしています。演奏が終了したら、お配りしたチラシにメールアドレスを記入していただきか、QRコードから空メールを送信してください。すぐに自動返信メールが届きますのでそれを見せてください。メルマガを配信させていただきますがいつでも解除することができます。これからもどうぞ応援を宜しくお願いします」
④ 最後の曲を演奏する。演奏終了後に以下の説明を行う
「無料サンプルCDをお配りしますのでこちらにお並びください」
⑤ 列を作っていただいて、メンバーは感謝の言葉をかけて無料サンプルCDを手渡す。希望する方には一緒に写真を撮る。
⑥ 配り終えたらすぐに2回目のステージをはじめる
さてこのプロセスにはいくつかの細かい仕掛けがあります。
それは、
① 無料サンプルCDを受け取っていただくために列を作り並んでいただくこと
② 無料サンプルCDの配布を終えたらすぐに2回のステージを行うこと
③ 無料サンプルCDはメンバーがひとりづつ手渡しをして握手をすること
です。
1回目のステージ後の無料サンプルCDの引き換えのための列を見て、歩いている人は関心をもってくれると考えました。
従ってすぐに2回目のステージを行えば次回のステージの集客数は倍増しメールアドレスの獲得数も倍増できると考えたからです。
またメンバーが無料サンプルCDを手渡しすることで、その後に配信されるステップメールが「知っている人から」のものになるからです。
知らない人からのメルマガは読まれない一方で、知っている人からのメルマガはロイヤルティが向上し読んでくれる可能性が高くなります。
そして実際にこの施策を導入した初日からCD配布には長蛇の列ができ、2回目のステージは人垣が幾重にも出来ました。
その後も多い日は1日2回のステージで100名のメールアドレスを集められるようになりました。
ちなみに想定外の出来事でしたが、無料サンプルCDを配布すると、元々、販売していた有料のCDが売れなくなるのでは?と考えていましたが、この予想を大きく裏切り、有料のCDの販売数も伸ばすことができました。商品を売るためには何よりも接点を作ることが重要だということを再認識しました。
でも本当にメルマガを配信するだけでライブハウスへの集客ができるものなのでしょうか?
実は私はあるデータを根拠にメルマガの登録者数を伸ばせば集客も伸びるのではないかという仮説を立てていました。
それは彼らの現在の集客数とメルマガ読者数の相関でした。
当時、彼らの集客数が20名~30名に対してメルマガ登録者数は300名でした。
つまりメルマガ登録者数の10%がライブハウスに来てくれるという仮説を立てていたのです。
もちろん仮説に過ぎませんでしたが、仮説が立てば検証してみるのみです。
ではメルマガでは何を発信するかです。
そこには明確なコンセプトが必要です。
バンドなので「僕たちの音楽を聞いてください」「ライブハウスに来てください」というのはあたりまえです。
彼らの場合には「僕たちの掲げた目標の達成を応援してほしい」というメッセージでした。
まだあまり有名ではないミュージシャンのファンになる醍醐味は、
ミュージシャンが成長し有名になる現場に立ち会えることだと考えました。
だから彼らには実直に「僕たちの掲げた目標の達成を応援してほしい」というメッセージと共に、
その具体的な目標をメルマガ登録者のみなさんに示すことにしました。
初期の目標は彼らのワンマンライブをソールドアウトすることでした。
ライブハウスのキャパシティは300名。
これまでの集客数が20名~30名。約10倍の集客が必要です。
この目標を約3か月間で達成することを目標に設定し、それを告知しました。
【メルマガの内容に関して】
ここが難しいところかもしれませんが、通常のビジネスの場合には「僕たちのために」「当社のために」という軸は通常は効きません。あくまでも「あなた(お客さま)のために」という軸が必要です。この事例でも「僕たちのために」というメッセージを発信しながらも、究極はその場に参加していただいた人たちに多幸感を与えることができ、また参加していただける方もその特別な体験を期待して参加していただいています。そうした意味からもメルマガでは長文で「ソールドアウトしたい。ソールドアウトして応援してくれたみんなに特別な景色を見せてあげたい」という気持ちを彼らは何度も伝え続けていました。こうしたビジョン実現応援型のコンセプトはクラウドファンディングや社会起業などの分野では有効だと思います。ビジョン実現応援型に関する戦略はまた別の機会に論じたいと思います。
バックヤードの目標はもちろんメルマガの登録者数を3000名にすることです。
3000名のメルマガ読者が登録されればその10%がライブに来てくれるという仮説に基づく目標です。
ワンマンライブまでに路上ライブを行っていた土曜日・日曜日は24回あります。
それに平日の水曜を加えて合計36回。
天候や他のライブが入ることを計算するとおおよそ25回。
1回に100名のメールアドレスをコンスタントに収集すれば、
2500名のメルマガ登録者と作れます。
すでに登録してくれているファンや、ライブハウスでの登録者数を合わせると、
約3000名の達成は可能だと計算しました。
さて現実ではどうなったか?
メルマガの新規登録者数は目標を下回る2000名強という結果でした。
でも前売りチケットは順調に伸びました。
残念ながらライブの前日の集計までにはソールドアウトさせることはできませんでした。
そしてそのことを開催前日でメンバーは感謝の言葉と共に、
目標の達成はできなかったことを正直にメルマガで報告しました。
ところが、
当日の午前中にそのメルマガを読んだファンの方が、
お友達などを誘ってくれてチケットの取り置きの依頼が殺到。
開催日にソールドアウトさせることに成功しました。
これが3か月間で集客を10倍にした方法のすべてです。
その後、彼らはどうなったのか?気になると思います。
彼らはその翌年も同じライブハウスを難なくソールドアウトした後に、
2年後には横浜最大のライブハウスだった横浜BLITZででワンマンライブを開催。
約800名の観客を動員しました。
そして2019年現在、彼らはインディーズレーベルに所属して音楽活動を精力的に続けています。
ただもうこの方法での集客はやめました。
彼らが今一度、音楽だけの力で集客したいと考えたからです。
私もその選択を心から応援しています。
ただ彼らに改めて伝えたいのは、
私は仕組みを作っただけで、人を集めていたのは、その当時からまぎれもなく彼らの音楽そのものだったという事実です。
残念ながら商品がどんなによくても売れないことがあります。
それはほんの少しのチューニングが狂っているからだと思っています。
私の仕事はそのチューニングを整えることだと考えています。
今回のマーケティング戦略レポートはビジネスの話ではないように思われるかもしれませんが、この経験はその後の私の仕事にも大きな影響を与えました。もちろん業種や業態によりやり方は変えますが、多くのクライアントでこの体験を生かして集客や販売のプロセスを作り成功しています。
そして思い起こしてみれば、森本尚樹の徹底活用マニュアルで公開している成果を出すための6つのポイントのすべてが、彼らの行動に当てはまることに改めて気づきます。
1.とにかく走りだす
2.成功に向けて最善を尽くす
3.推進責任者・推進メンバー・ツール制作担当者を決める
4.プロジェクト会議を定例化する
5.ツールの制作を計画的に進める
6.信じて前進し続ける
彼らと深夜の当社の事務所でプロジェクト会議を行っていたのをなつかしく思い出します。
最後に今回の森本尚樹の実践マーケティング戦略レポートを、あなたのビジネスに活かすためのポイントをいくつかまとめておきます。
彼らのケースでは路上ライブがそれでした。
現在はB2CではLINE公式、B2Bではメルマガが今も有効だと思います。小さな会社の経営者の場合にはフェイスブックのグループを利用する方法もあります。費用は掛かりますがニューズレターのような郵送物でもかまいません。但し、いずれの場合も相対するホームページが必要不可欠だと思います。
メルマガなどの情報発信では決して売込みをしてはいけません。それはお客さま視点ではないからです。お客さまがワクワクしたり、またお客さまの問題が解決するためのコンテンツを提供してください。
〇〇株式会社からの情報よりも、お客さまと面識のある〇〇さんからの情報の方が、お客さまはよりリアリティを感じていただけ、ロイヤルティの向上に繋がります。
集客型のビジネスでないなら面談していただける理由、ご連絡をいただける理由、相談していただける理由をしっかりと作ってください。それは「あなたのために」というメッセージが有効です。
以上、皆さまのビジネスの参考になれば幸いです。
不定期配信となりますが、次回の森本尚樹の実践マーケティング戦略レポートをお楽しみに。
マーケティングインストラクター
グランドマスター
森本 尚樹
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